私が所長Kです、趣味を中心に展開できればと思います。


by elise-4550
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ゼロバイアス

Nch接合型FETは通常Vgsを負の値で使用します。バイアス部のインピーダンスにもよりますが、使う領域は、せいぜいゼロバイアスまでで、そこが動作上の最大電流となります。

実際には正電圧までゲート電流の流れない領域が有り、それは0.4Vとも0.5Vとも言われています、品番によって程度に差があるのでしょうか。

1970年代後半、接合型FETの最大gmが季節ごとに更新された時代がありました。それを待つようにMCカートリッジ用ヘッドアンプが各社から発売されています。その高gmFETのアマチュア的な使用法にゼロバイアス動作点のヘッドアンプがあります。

MCカートリッジの出力はハイレベルのカッティングがしてあるLPでもせいぜいp~p200mVなので、FETのVgsを0V中心に振ってもその高入力インピーダンスは保たれ、増幅度は最大、歪みとノイズは最低の動作点となります。更に、バイアス回路のノイズ発生や音質低下はないため利点の多い回路です。

シンプル イズ ベストの見本のようで、電源の設計とパーツの選択が勝負でした。場所が場所だけに音質の変化は大きく、アンプ全体を総替えしなければ判らなかった抵抗の音の違いが入力抵抗と負荷抵抗の2本で判断でき、便利でした。ただ当時はハンダ付けや線材の引き回し、振動対策等に無頓着で今では悔やまれます。

この使用法の欠点は、FETの Idss 選別後に設計の定数が決まる事以外に,入力容量Cgsと帰還容量Crssの問題が有ります。特にCgsはゼロバイアスでは最大の所で使う事になり、また、PN接合容量なのでその値が入力電圧で非直線的に変化してしまいます。カスコード接続でほぼ逃れる事の出来るCrssよりも大問題でしょう。

まあ、考えてばかりいないで実際に作ってみて定評の有るMC トランスやヘッドアンプと比較してみる事でしょう。ローコストに作る事もでき、アナログ使用頻度の高い方の自作入門にはお勧めです。配線やパーツの選別でうまくゆけば世界の名器を凌駕できます。

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話が思った方向に行かなくて困っています。私はずいぶん前から、このゼロバイアス動作をヘッドアンプ以外にも応用してきました。きっかけは1985 9月号のラ技に掲載された大谷暢道氏の試作記事「クロスゲート回路」です。この回路はゼロバイアス以外でも、もちろん動作しますが、アンプ入力段にこれほど最適なものは有りません。ゲイン、直線性、ドリフト特性、バランス・アンバランスに対する入出力の対応性、ノイズ特性等文句有りません。これをカスコード接続で用いる事により、プリからパワーまで、全てのアンプ初段に使えそうです。

大谷氏はこれを横型カスコードで用いて、無帰還一段で、ハイゲインのEQアンプに仕上げておられます。実に野心的な素晴らしい発想です。詳しい解析は当該記事をごらんください。

初段だけでなく、二段目もゼロバイアスを利用できる回路が有ります。これは、ラ技 の1983 12月号に掲載があります。あの黒田徹氏が発案された「トーテムポール型差動回路」です。これも特徴が多い回路で、大谷氏の発想と類似している所も有ります。詳しい解析は当該記事をごらんください。

巨匠 黒田氏についてはまた稿を改めて記さないと、自作オーディオを営むものとしては失礼にあたりましょう。特に、1980年代における独創、新発想の高性能アンプ群は今でも光彩を放っています。その後、ラ技の息の長い連載により、自作派を底辺から掘り起こし、ハイレベルまでに導く作業は他の追随を許しません。

さらに、このトーテムポール型回路はバランス入力が基本で、先の(時系列的には後ですが)クロスゲート回路との相性が良いのです。黒田氏は作品中でそのバランス入力のためにもう一段設定しておられますが、それが不要になります。

というわけで初段、二段目ともFETゼロバイアスという同じ設計思想の独創的な(私の独創ではありませんが)回路が手に入ったわけです。これを、先のバランスA級出力段と構成させればどうでしょうか・・・自作派の血が騒ぎます。

さらに、先ほど指摘しましたゼロバイアスによる入力容量の影響は、これまでバランス出力に試してうまくいっている出力を片側ずつ反転増幅にする事でFETのゲートは仮想的に0Vとなるため、理論上はノンリニアな変化が無視できるはずです。

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という事で、作ったのがこれです。電圧増幅段は前記の構成で2SK30ATM,2SJ103と2SK170、2SJ74の組み合わせをIdssを選別して用いています。出力段は2SK214,2SK134,2SJ77,2SJ49をインバーテットダーリントンで片側3組、計6 組装備しバランス出力段を構成しています。

電源は前段、出力段共にMOS FETによるppレギュレーターを通しています。この辺は今まで通り、やりすぎの凝りすぎです。まあ、音質コントロールの一環だと思ってください。
出力は80W,8ohmで20WまではA級です。

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さて音質は・・・音のくまどりがありません。これは初めての事でした。今までに接した音の中で最も気負いの無い音質でした。余計な付帯音がせず静かなのは今まで通りですが、このようにケタ違いに滑らかな音は聴いた事がありませんでした。今でもです。いわゆるオーディオ的な音とは異なり、普段に接している音たちに少し似ています。

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情報量とか解像力とか制動感などの言葉で比較するのはあまり意味がありません。あえて云えば、滑らかすぎる感じがするものの、これはむりくりな悩みにも思えます。SPとの組み合わせによってはむしろプラスにする事が出来ます。

若干の手直しの後、十分にエージングと試聴を行い、これでゆく事に決めました。
この後、同じ回路構成のRIAA EQ プリも製作しました。これは、パワーアンプ以上に前記の音質を発揮しています。

何だかやっとオリジナリティの高い満足なアンプができた気分でした。

ちなみにこのアンプは現在ガレージの4550ダブル駆動の低域に使っています。片チャンネル4本の416-8Aをシリーズ・パラレルに接続し、その中点をアースに落として、バランス出力のメリットを生かして用いています。

この後もこの回路は当研究所の標準回路として活躍する事になります。
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Commented by 初心者 at 2011-06-13 22:08 x
時々拝見させていただいています。私はTrアンプを2台くらい
作りました。MJ誌の回路のままです。貴兄のHPにはたくさんの
アンプがありますが特にTrアンプ用の電源トランスは、どういう
ところで入手されているのでしょうか?山水もタムラも販売し
なくなり、私の場合は中古品などとジャンク屋で探すくらいしか
入手方法がありません。
Commented by elise-4550 at 2011-06-15 11:13
初心者さん

コメントをどうもありがとうございます。

電源トランスの入手は最近特に大変になってきましたね。

かつては、オーディオメーカーの「棚卸し?」品等多く出回っていて、メーカーでステレオ用に使っていたものをモノで片側2個使用して、電流容量の余裕をとることができたりしました。

私も、現在はジャンク屋や、オークション等で入手したものが多いです。

最近は、あまりオーディオ用ではない普通の見てくれが悪いトランスの方がよけいなシールドがない所為かいい音になる気がしています。
Commented by 初心者 at 2011-06-18 09:53 x
elise-4550さん
お返事ありがとうございました。
私は、バッテリー式のアンプにも興味あるのですが、
トランスを使ったAC電源の電気をたくさん食うA級や
AB級アンプが好きなのです。見た目もパワフルですし。
では、今後も時々拝見させて頂きますのでよろしく
お願いします。
by elise-4550 | 2009-05-14 01:28 | オーディオ | Comments(3)