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私が所長Kです、趣味を中心に展開できればと思います。


by elise-4550
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感謝・・先人のアイデア・・感激

前回まで自作半導体バランス出力アンプの一連の流れを追ってきました。このラインは今でも続いているわけですが、当研究所のSPシステムが増殖してゆくに従い、それぞれのシステムにこの重くて大きいアンプを設置するわけにはゆかなくなります。

マルチアンプだと更に多くのパワーアンプを必要とし、電源容量と発熱の関係で苦しくなります。半導体アンプで何とかもっとコンパクトに高音質を実現したいものです。

いくつかの試作を試みましたが、どうもうまくゆかず、自作の小規模なアンプは、癖は強いもののその組み合わせによっては魅力となりうる真空管シングルアンプか、努力によりコンパクトなステレオ構成にまとめた真空管直列型SEPPが中心となってゆきました。個性的な音がするのも手伝って製作は面白く、けっこうな数を作りました。

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45 single stereo

例えば、オンケン型マルチダクトシステムの中高音は試聴の結果VT-25パラレルシングルと300Bシングルでここ数年は落ち着いています。現在、ガレージ4550ダブルの中高音はVT-25直列SEPPと3A/109Bパラレルシングルで試しています。

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3A/109B para single stereo
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VT-25 SEPP stereo

ただ、スキャンスピークを始めとする現代風のSP群が増えてきますと、先入観も手伝うのか、シングルでは上手く鳴らせません、最大出力25Wの211でもです。小型の直列型SEPPも小出力のためうまくゆきません。SPがビンテージ系と比べて半端じゃなく低能率なんです。また、大出力の真空管PPも使ってみましたが、半導体アンプの方が音楽の抑揚や音場の広がり等ずいぶん優れています。

もちろん DIVAにはインピーダンスマッチングを考えただけで、球をつなぐ気にもなりません。

私の製作能力が至らないのでしょうが、逆に考えると半導体アンプがそれだけいけているという事で、痛しかゆしです。

唯一の例外はEV型SEPPたちです、これらは半導体アンプとは違ったゾリッとした切れ味を持ち、音場感はモノラル構成も手伝って広大です。ただ、A級バランス出力アンプに負けないくらい大きく重く発熱します。それでは所期の目的を忘れてしまっています。現在、オンケン型マルチダクトシステムの低音は先に紹介した 6B4G EV型SEPPです。

やはり、半導体でコンパクトに高音質を実現しなければなりません。

パワーアンプ回路上の最大音質劣化要因は明らかに出力段です。それに比べれば、電圧増幅段は回路が違っても、自分の感覚では好みの範囲です。だから、A級バランス出力より欠点の少ない構成は至難の業なのです。

ところが、そのうちに可能性のある回路がやってきました。ラ技1995 10月号に載った藤井秀夫氏の「逆立ち式出力ソース接地 MOS-FET 単段アンプ」です。

それまで、主に真空管アンプのフィールドで独創的な活躍をしてきた藤井氏は、自らの発想の赴くままに半導体アンプにも発表の場を広げていました。私は化学が専門なので、彼と全盛期のライナス ポーリングがダブって見えました。褒めすぎでしょうか?

この回路も理論上出力段電源の各種非直線性を減少させる事になり、高音質のためにアイドル電流を多く流す必要はないかもしれません。アンバランス出力なので、出力段の素子数も減少します。もし、NFBをかけるとしても、ソース接地なので、前段は対接地基準の信号で高音質が可能です。何より実質二段増幅なのは魅力です。

使えそうです。

ところが、彼の製作記事の追試を行った所、ひどく粗雑な音質でした。しかし。本質的に優れた回路をこの程度で諦めきれるものではありません。初のフルタイム4WD Audi QUATTORO も初期のWRCでは熟成された2WDたちに勝てない事も多かったではありませんか。4WDがWRCを牛耳るのにあまり時間はかかりませんでしたが。

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電源がフローティングしている事に原因の一つを求めました。ここのストレイキャパシティで、ダイオードのSWノイズや各種電磁波が電源にのる事により、Trに悪影響があるのではないかと思いました。そこで、平滑コンデンサーを±共に二分割してその間に100μHのパワーコイルをかませました。

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結果は劇的でした、同席していた研究員Tとともに顔を見合わせて笑ってしまいました。
これは分かりやすい改善です。一気にシルキーな高音質に変化しました。「霧が晴れたよう」「ベールをはいだ」という使い古された常套句が頭に浮かびます。

ついでにアースも同様にコイルで高周波を分離してさらに良くなりました。このテクニックは球のアンプを作り始める前なら、到底思い浮かばなかったでしょう。真空管の電源回路には普通にチョークコイルが入っています。以前は半導体アンプの電源にコイルを入れるなんてご法度でした。今でもそう感じている方もおられるかもしれません。

とにかく、これは使えると確信できました。
by elise-4550 | 2009-05-18 00:22 | オーディオ