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私が所長Kです、趣味を中心に展開できればと思います。


by elise-4550
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大艦・・幻の6C33COTL・・巨砲

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このかん、今まで製作したパワーアンプの目ぼしい展開を書かせていただいています。実際には取るに足らない製作、もう記憶がおぼろげなもの、失敗作、は飛ばしていますので、実際にはもっと回り道をして、見当外れな事も多かったわけです。

ただ、そろそろ何かに記録しておかないと、回路図等は残っていてもどのような経緯でそれを行ったのか、という必然性や展開を思い出せなくなる日がいつかは来るのではないかということで、覚えている範囲で記録しています。

当然、最近の事は詳しくなります。パワーアンプで最も最近の動きは、真空管OTLアンプになります。これも、最初はけっこう古く、当時のソ連がペレストロイカ政策を執ってくれたおかげで、6C33Cが以前より格段に安く手に入るようになったのです。PAL(当時滋賀にありました。)さんや、アトモスさんから大量に仕入れて、製作を始めました。

そのきっかけは、MJ誌1990 3月号、佐藤康夫氏による投稿記事です。この製作記事はアンプ自作派では「知る人ぞ知る」という感じで、全て真空管で全段直結-OTLアンプを発表した珍しい例と思います。

大艦・・幻の6C33COTL・・巨砲_f0201222_124656.jpg


初段は交差型、二段目は五極管による差動増幅、出力段は6080の4パラでした。いわゆる「打ち消し」は二段目の負荷を三極管による能動負荷とし、そのグリッドに出力を帰還する事で行っていました。非常に優れた独創的な製作で、このような突発的な記事がそのままにならず、発展連載する事を願いましたが、これ以上の進展はありませんでした。

初段と二段目を高抵抗(150kと1.5M)でレベルシフトしている点、出力段バイアスが二段目のドリフト変化をそのまま受ける点、長期安定性、など検討する点はあるものの、当時初めて真空管アンプを組んで「目覚めた」半導体派の私には魅力的なテーマでした。

出力段は球(6C33C)のOTLで、その前段を半導体構成としても、私にはなんの抵抗感もありません。そのことで、前記の弱点を解消できるはずです。更に、その頃例の半導体A級バランスアンプの成功に盛り上がっていたので、このアンプも、同じ構成をとる事にしました。

球アンプ第二作でこれほどの大作は、まさに傍若無人だとベテランの方から思われる事と思います。今の自分で、近くにこれと同じ人がいたら止めますね。

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回路はクロスゲート回路とシャントレギュレーターTL-431を組み合わせた意欲的なものでした。TL-431の温度特性を利用して、安定な動作を確保します。そして、モノラル-DCアンプにしました。6C33Cは片チャンネルに8本、つまり、片側出力あたり2パラPPです。8本の理由はヒーター12.6Vを直列にして、AC100Vにて直接点灯するためです。

6C33Cのエージング、セレクションにとても手間がかかります。発熱量が半端じゃないので、熱的安定性がとれるまで測定値が激しく変化し、作業を焦るとやけどするし、大変でした。

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製作は鈴蘭堂のSL-20を使い、トランスは半導体アンプ用のかなり大きなものを使いました。二台並べると、6C33Cが16本林立し壮観でした。巨大なA級バランスアンプたちの中でも異彩を放ち、製作意欲がいやがうえにも増します。

そして動作は・・・しました。

音は・・・でました。

それまで聴いたどのアンプよりも「高貴」な音でした。もちろん私のようなものが「高貴」が判るのかといえば判りません。ただ、今までにはない音質に対して、それ以前に聴いた音との比較で、そんな感想が出るような音だったという事です。当時の自分にとって、何も音質的に文句のある所はありません。多分、自分のオーディオ経験にはないタイプの良い音を偶然出してしまったのだ、と 今は思えます。当時の感想は。それ以上思い出せません。後で述べる二つの理由でそんなに長い間聴かなかったからです。

[球は暫定的に挿しています動作はしません]

実はこのアンプでアポジーDIVAを駆動しました。なんと、普段聴いている音量が出せたんです。もちろん公称最低インピーダンス3ohmで、バランス出力なので、片側出力段あたり1.5ohmであり、 試験的に鳴らす以外はやめたほうが良いでしょう。

ただ、ステレオの2台で約1.2kWの電力消費は非常識で、どうかすると、当時のマンションのブレーカーが飛びます。少なくとも夏使うのはは嫌です。よって、このアンプは何か特別なときだけ繋ぐ事にしました。また、放熱設計が楽観的で、長時間の連続使用では、壊れないものの、触れないくらい熱くなります。だから常に扇風機の風を当てて強制冷却していました。

そんな扱いで部屋の床をふさいでいたこのアンプは、地震によるDIVA倒壊の下敷きで、6C33Cが割れ散乱し、我がリスニングルームを大日本プロレスのデスマッチ会場の様にしてその短い生涯を閉じました。その想い出は、悲劇の大空母「信濃」と同じくに我々の心に深く刻み込まれたわけです。

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by elise-4550 | 2009-05-28 00:41 | オーディオ