半導体プリアンプの逆襲
2009年 06月 09日
Tr式のプリも負けてはいられません。試作と実験をいくつか行い、Trには、真空管では難しい電源からの定電流回路による隔離が、きめ細やかで伸び伸びした音質を確保できる、と確認しました。問題は定電流回路です。あまり大げさな設計は浮遊容量が増えるのか良い結果を出せませんでした。そこで、接合型FETによる最もシンプルな回路を用いる事で設計したのがこれです。RIAA EQは省きハイレベル入力専用です。
FET差動のTrによる横型カスコードでカレントミラー負荷とし、カスコードTrは黒田氏考案のバランス回路で理想的動作を実現します。増幅段は1段で、その後は、NPN Trの抵抗負荷コレクタ接地です。正負電源双方からの変動に強く±10Vから±35V位まで動作は変わりません。
また、これは反転アンプで帰還抵抗をVRとし可変ゲインにする事で音量調節を行います。最も音質に悪影響の無い音量調節と思っています。
それでも電源回路の変更やパーツの取り換えで音質が変化します。整流Diの品質には特に敏感でした。それに比べればケミコンや抵抗の品質ではあまり変わりませんでした。
困ったときは私の場合いつも雑誌がヒントを与えてくれます。ラジオ技術誌で石塚峻氏が抵抗入力という珍しい整流回路を試しておられました。整流後のケミコンを分割し、チョークコイルを挿入する事による音質向上は試していましたので、この方法も効果がある事は予想できました。
これが正解でした、AC100VやDiのスイッチングによる高周波が定電流回路の接合容量等を通して増幅回路に悪影響を与えていると考えられます。半導体の特有のくすんだ音がしない、きめ細やかな美音でした。
整流Diをスイッチングさせないこの手の整流形式は、他にもチョーク入力がありますが、いろいろな点で、消費電力の小さいプリアンプにはこの抵抗入力整流が向いていると思います。
初段には2SK109,Trは2SA995,2SC2291,2SC2232を使っています。抵抗は残り少ないシンコーのタンタル1/2Wを用いています。
その後、同じ設計コンセプトでCHディバイダーを製作しました。バッファーは2SK109によるシングル定電流負荷で構成しています。2wayと3wayをSWで切り替えできます。-12dB/octのスロープです。