RIAA偏差
2010年 06月 25日
まだ、パスコンに関して「これだ」というものはまだ判りませんが、思わぬ成果を見つけました。
RIAA偏差による音質の影響です。偏差の大きさではなく、変化の傾向が大きく音の印象に作用するように感じています。
というのも、NFBによるイコライジングを行っていますが、J-FETゼロバイアスによる一段増幅のためオープンループゲインにあまり余裕がなく、一台一台RIAA等価曲線を測定しています。CRパーツの偏差だけでなく、FETの個体差と次段の入力インピーダンスによってEQ定数を変更して±0.3dB以内に収めています。
その所為で、±0.3dB以内の偏差曲線が一台ごとに様々な傾向を示しているのです。
普通、人の耳は±0.3dBの変化は聞き分けられないとされています。SPの特性や部屋の音圧特性に与えるケタ違いの変化を考えると当然に思えます。
ところが幾つかのフォノイコライザーを取り換えて聴くと、電源パスコンは異なっていても似ていて区別できない音質のグループに分ける事ができます。
同じステレオペアーでも左右を取り換えると音質の変化を感じるセットがあります。
つまり、パスコンの音質差はたいした事がないような気がします。
「この音質差は何処から来るのか」と考えて気付いたのはEQ偏差特性なのです。
これまでの製作例からの分類では、1kHz以下では①中低域が上がっていて最低域が下がっているもの ②中域が下がっていて中低域以降は一定なもの 1kHz以上では①偏差がマイナスで最高域まで一定なもの ②偏差がプラスで推移し最高域ではゼロ偏差になるもの ③ほとんど偏差ゼロのもの になります。
全ては±0.3dBのできごとです。
RIAA偏差特性は特定の周波数にピークやディップをつくったりする事はありません。可聴帯域内でなだらかに変化します。つまりある帯域が面積で変化して効いてくるので音色の変化として感じ取れるのではないかと思われます。
ひょっとして、世の名機とされるプリアンプのEQ偏差を完璧にまねると、その特徴が再現できるのではないかと思います。
このような事が判るようになったのも、MC昇圧トランスを用いずに、きわめて純度の高い音質を持つフォノイコライザーが製作できたからです。MCカートリッジを愛用する者として、質の良いMC昇圧トランスを用いたフォノイコライザーを音楽的に超える事は至難の業なのです。
ただ、MCトランスを使っていては、その個性に消されてここまで細かい変化を音楽の受け取り方の違いとして感じにくい事は確かでしょう。やはり今回の回路構成は傑作だなと再確認しました。